制作者インタビュー|STORY01 デザイナー鈴木ゆかり

「あなたらしさ」をデザインする。

家族だから”知ってること”がたくさんある。
でも、家族だから”知らないこと”もたくさんある。

「あなたらしさ」をデザインにのせて
家族との会話の種を、もう一度自分を好きになる瞬間を、作り出す。


デザイナー 鈴木ゆかりの物語。

人生のベスト盤デザイナー 鈴木ゆかり

私が知らなかった祖父母の姿。家族が、家族を知るサービスをしたい

「何か『家族』に関わるサービスがしたい」。

そう思うようになったのは、デザイナーとして独立した直後に亡くなってしまった祖父母のお葬式での出来事がきっかけです。

祖父はもともと病気を患っており、何度か危篤状態になってしまったことも。だから亡くなった知らせを聞いたときは、「ついに」という気持ちでした。そして、祖父のお葬式が終わってから1週間後。後を追うように祖母も息を引き取りました。

祖母の死はあまりにも突然で、信じられなかった。祖母との早すぎる別れに気持ちが追いつかず、「まさか」と思ったことを覚えています。

実家のある奈良で執り行われたお葬式には、遠くは長崎から、たくさんの親戚たちが参列してくれました。お葬式後、祖父母の家や遺品についての相談をしていると、だんだんと思い出話に花が咲きアルバムを引っ張り出す事態に。

その様子を見ながら、私は今更ながらある疑問が湧きました。それは「私の実家も祖父母の家も奈良にあるのに、どうして長崎に親戚がいるのか?」ということです。

何気なく母に「なんで長崎に親戚がいるの?」と聞くと、「あれ知らないの? おじいちゃんとおばあちゃん、もともと長崎生まれなんだよ」と言われて、びっくりしました。

と同時に、私は家族や親戚の中でもとりわけ祖父母との関わりが少なかったことに気がつきました。

私には姉と兄がいるのですが、2人は幼い頃、祖父母と暮らした経験があります。ですが、私が生まれたときには別々で暮らし始めていました。さらには就職で上京してしまったため、大人になっても年末年始で会う程度。

お葬式の場でも私以外の親族はみんな涙を流していましたが、思い出が少ないせいか私はうまく悲しめないまま、ふわふわとした気持ちで過ごしました。

そのことが、なんだかすごく寂しかったことを覚えています。

生きているうちにもっともっと2人のことを知りたかったし、もし知っていればお別れのときの気持ちも違っていたかもしれません。みんなと同じように、祖父母の思い出話もできたかもしれない。

私が知っている祖父母の姿と、姉や親戚たちが知っている祖父母の姿が違うことに2人と別れてから初めて気がつきました。私にとっては、年末年始に会っていた祖父母の姿がすべてだったんですよね。

家族だから“知っている”と思っていたけれど、家族だから”知らない”ことがきっとたくさんある。

この経験から、いつか別れが来てしまうなら、私のように後悔せず、生きているうちに家族が家族のことを知れるサービスをしたい。

そう思い始めていました。

「魅力を伝える」スキルがなかったから、私はデザイナーになった

仕事をする上でのモットーは、「人を笑顔にしたい」という想い。デザイナーとして独立する前は、美容専門学校卒業後美容師になり、その後全国チェーンの飲食店を運営する会社に転職。10年目には事業責任者を任せてもらえるまでになりました。

ですが責任者の私は自分の実力不足で業態をひとつ、潰してしまったのです。

自分に足りないところだらけで、すごく後悔しました。もっとお客様にメニューやサービス、働く人、ブランドの価値を伝えたかった。もっと自分に伝える力があれば。

そう思ったとき、デザインがもつ力を感じるようになりました。

事業責任者はお客様に提供するメニューや販促キャンペーン、ポスターなど店舗運営に関するすべてを取り仕切る役目がありました。料理は一級品でも、それを伝えるメニュー表やポスターデザインが魅力的でなければお客様には選んでもらえない。魅力を伝えるスキルが、私にはなかったのだと思いました。

そこから次のステップアップとして、働きながら通えるデザイン学校に入学。デザインを学ぶうちに、もしあのとき私にデザインの知識があれば、多くの人を笑顔にできたかもしれないと思うようになりました。

商品を魅力的に伝えられていれば、お客様が笑顔になることはもちろん、働くスタッフたちにも働きがいのある環境をつくってあげられたかもしれない。

デザイナーになった今、あのとき足りなかった「伝える力」を武器に、パンフレットや名刺制作を通してたくさんの人たちを笑顔にできていると実感しています。

自分のイメージではない、「その人らしさ」をデザインする

デザイナーとして走り出し、祖父母との別れを経験した私が「家族に関わるサービスをしたい」と思ったとき、知人を通して知り合った飯室さんが家族に関わるサービスを始めたい、と話していたことを思い出しました。

すぐに連絡をして同じ思いだと話し意気投合。私と同タイミングで、書籍編集の仕事をしていたメンバーも飯室さんに連絡をしていたようで、その後3人で顔合わせをしました。

ライター、書籍編集者、デザイナーと、それぞれ得意分野が違う3人で話し合いながら、1つずつサービスのかたちを作っていきました。今ではカメラマンやアートディレクター、新たなライターも加わってサービスを提供しています。

サービスを始めた3人。左から編集者(大西志帆)、ライター(飯室佐世子)、デザイナー(鈴木ゆかり)

デザイナーとして、人生のベスト盤を制作するときに心がけているのは「その人らしさ」がデザインから滲み出てるかどうか。この世に1冊しかないBOOKだからこそ、デザインもその人らしくしたいのです。

そのために、ライターや編集者とは違う、客観的な目を持つようにしています。

話し方や見た目がクールでも、そのクールさがその人の本質かどうかは疑う必要がある。もしかしたら、お茶目な部分があるかもしれないし、家族に見せていないその人の姿があるかもしれない。

自分の趣味や勝手なイメージではなく、「その人らしさ」を一番大事にしたい。ご本人も含めて、このBOOKを見るであろう大切な人の笑顔を想像しながらデザインしています。

話すことで気づいて、自分をもっと好きになる

人生のベスト盤の一番の魅力は、第三者が話を聞くことだと私は思います。

家族だから「お父さんはこう!」と当たり前になってしまっている姿がきっとある。そこに第三者が入ることで、家族も知りえなかった思い出が聞けるようになります。

完成したベスト盤を一緒に見ながら「こんなお父さん知らなかった! でもデザインは、なんかお父さんっぽいね!」なんて笑ってくれたら嬉しいです。近くにいるから”言えなかったこと”、”知らなかったこと”を見て、ご家族のこれからの時間がもっと濃いものになったらいいな。

誰しも自分自身の話をするって、きっと照れくさい。ですが、振り返り、話すことで改めて自分のことを好きになるきっかけにもなり得ると私は思います。

頑張ってきたこと、壁にぶつかったけど乗り越えてきたこと、あなたが当たり前だと思って気づかなかった頑張りや経験が「人生のベスト盤」を通して見えるようになる。すると「あ、けっこう頑張ってきたな」って自分に気づいて、自分をもっと好きになれると思います。

だから、私たちに聞かせてください。あなたの人生を、私たちが素敵な1冊にします。

(聞き手:田邉 なつほ)

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この記事を書いた人

田辺 なつほのアバター 田辺 なつほ ライター

株式会社声音のライター。内装デザイン会社で営業を経験後、「書くことを仕事にしたい」との想いからライターの道へ。介護業界の採用支援を行う会社で業務委託ライターをし、編プロで編集者を経て、株式会社声音に社員1人目として入社。梅干しと洗濯、ポストカードが好き。

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