思い出の引き出しを、そっと開ける。
大切な人と過ごした時間。
きらめいていた思い出のカケラは、いつのまにか記憶の奥の方へ。
大切な人生のピースを、対話によって共に取り戻すライターのおはなし。
おばあちゃんの初デート
忙しない日々のなかで忘れられがちな、何気ない瞬間にこそ、大切な物語が隠れている。
そう思うようになったきっかけは、おばあちゃんとの会話でした。
私はおばあちゃんに、
「(亡くなった)おじいちゃんとの1番の思い出ってなに?」と聞いてみたことがあります。
すると、「初めて東京にデートしに行ったときに、おじいちゃんが上野で高級なすきやきを食べさせてくれた」と教えてくれました。
「今でもあの味が忘れられない」と、懐かしそうな顔で。
その時おばあちゃんが見せてくれた「ああ、そうだった」と思い返した瞬間の表情、今は隣にいないおじいちゃんのことをふっと考えた瞬間の表情。それらを、今でも鮮明に覚えています。
その後、家族に「おばあちゃんにとっての、おじいちゃんとの一番の思い出はなんでしょう?」と聞いてみたのですが、誰も答えられませんでした。その時に、ふと思ったんです。
私が聞かなかったら、おばあちゃんはその話を思い返して誰かに話すことはなかったかもしれない、と。家族全員が知らないまま、いつか消えてしまう記憶だったかもしれません。
たとえ家族であっても、語られていない記憶がある。そして、そのことを本人が話す機会がない限りは、周りの人も知らぬままなくなってしまう可能性があることに、もったいなさともどかしさを感じました。
人生の中の小さな光を探して
人生を振り返った時に、誰しも強く印象に残っている出来事があると思います。
例えば、進学や就職、結婚といった人生のターニングポイント。一見すると、それらが記憶の中で北極星のように強く輝いている。でもその周りには、日常という小さな星々が確かに存在しています。
大きな出来事だけでなく、日々の小さな出来事がたくさんあって、それらがつながって人生を形づくっている。
人生は夜空に瞬く星座みたいだ、と思います。
そこには決して大きな輝きを放つ星だけではなく、小さな光も確かに存在しています。その小さな光こそが、人生を彩る大切なピースだと思うのです。でも、そんな人生の大切なピースは、日々の生活の中でどうしても取りこぼれていく。
だからこそ、一瞬一瞬の何気ない思い出や感じたことを、大切な人と共有することに価値があると私は信じています。誰かの人生の中に確実にある、心が跳ねたその瞬間を、忙しない日々の中で取りこぼさないようにしたいのです。
世界に1冊だけの特別な本
人生のベスト盤の魅力は、忘れていた記憶を丁寧にたぐりよせ、人生にもう一度向き合えるところにあると思います。
そしてその人生をまるごと本にすることで、いつでも誰にでも手に取れる形で、ずっとのこしていくことができる。
そのために、人生のベスト盤の制作は、お客様との共同作業で進んでいきます。お話を聞きながら、大切な思い出を、記憶の引き出しの奥から一緒に取り出していく作業のようです。
ベスト盤のインタビューに立ち会う中で、「あぁ、そんなこともあったな」と、ぱっと表情が明るくなり、忘れていた気持ちが湧き上がってくる。そんな瞬間に立ち会える度に、心が動かされます。
そこから学んだことは、「他愛ない」とその人が思っていることの中にこそ、「多愛ある」ことがあふれているということです。
私のおばあちゃんの話のように、誰かに聞かれることで、思い出せることがあるんですよね。
私はライターとして、インタビューを通じて、お客様の大切な人生のピースを一緒に取り戻すためのお手伝いをしたいと考えながら、制作に携わっています
心から共感するサービスを、メンバーとともに
そもそも、私は人生のベスト盤の「大切な人のために作る、人生の本」というコンセプトに共感して、運営会社である株式会社声音に入社を決めました。
人生のベスト盤というサービスは、声音の代表取締役・さよさん(飯室 佐世子)がお父様を亡くして、「もっと話を聞いておけば良かった」と後悔したことが出発点。
だからこそ、さよさんは常にお客様に寄り添い、考え続けている。そして、ライティング・企画力・デザイン思考など、持っているもの全てを総動員して、全身全霊をかけて本をつくっています。
そんなさよさんの志と姿勢に心を動かされ、デザイナー・編集者・カメラマン・ライターといった専属のクリエイティブチームが、人生を形にすることに真剣に向き合っている。
「最高の本をつくる」その想いが私たちの目線を同じところに向かわせています。
そのチームの一員として、私は言葉の力で、お客様の大切な人生のピースを共に取り戻したい。エピソードや記憶を一つひとつ丁寧に紐解き、繋ぎ合わせることで、その人の人生を形にしていきます。
ぜひ、あなたの物語を、私たちに聞かせてください。
(聞き手:坂田 ナツキ)
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